コナミ矩形波倶楽部(コナミくけいはくらぶ)は、1990年代に日本のコンピュータゲームメーカー・コナミ(→コナミデジタルエンタテインメント)で活躍していたバンドで、コナミのゲーム音楽を担当していたメンバーが在籍していた。
コナミ矩形波倶楽部をサウンドチームの総称、矩形波倶楽部はバンドの名前との捉え方もあるが、一般的にはどちらの名称も混同して使用されており、コナミ自身ですら混用していた。本項では一括してコナミ矩形波倶楽部とする。
概要[]
1987年、当時在籍していたコナミの音楽担当チームのメンバーがバンド活動を行う為にコナミ矩形波倶楽部を結成した。ただし、古川もとあきは、自身のウェブサイトにおいて、1990年結成と記述している[1]。当時はタイトーのZUNTATA、セガのS.S.T.BAND、日本ファルコムのJ.D.K.BANDなどゲームメーカー内でのバンド結成が相次いだ時期でもあり、矩形波倶楽部もその流れに乗ったものであった。
コナミのゲーム音楽CDでは、基本的にバンド結成以降「作曲者」「コンポーザー」のクレジットが「コナミ矩形波倶楽部」で統一されていたが、実際にバンド活動に関わっていたのは古川もとあき・プロフェット深見・森本ゆきえ・船橋淳・なぞなぞ鈴木などであり、その他の音楽スタッフも在籍してはいるが、バンド活動にはあまり携わっていない状況であった。行ったライブの内幾つかの模様は(音源のみであるが)『千両箱』シリーズに収録されている。
矩形波倶楽部が存在していた時期のコナミ音楽は非常に評価が高く、前述のゲームメーカーの作品音楽と並んで当時起こったゲームサウンドブームの一角を担っていた[2]。特にファミコンやMSXなど向けにソフトが開発されていた1980年代には音源開発にもコナミは力を入れており、MSXの『グラディウス2』などに見られるようなSCC、ファミコンの『悪魔城伝説』、『魍魎戦記MADARA』、『エスパードリーム2』に搭載しているVRC VI(パルス波2ch+鋸波1ch)、同じくファミコンの『ラグランジュポイント』に搭載されているVRC7(FM音源をファミコンでも使用できるようにした)など、独自の音源をROMカセット及びROMカートリッジに搭載していたほどだった。また別の理由として、完成した曲をコナミのスタッフの間で何度も聞き意見を募るというチェック体制がしっかりしていた。また『Konami Game Music Collection Vol.1』ライナーノーツでの山下章の解説などにおいて、メロディーライン、『沙羅曼蛇』をはじめとした3連符の多用、ボイス(声で無く音種の一つ)の効果的な使用といった点がコナミミュージックの特徴として挙げられている。
その後ゲームミュージック作曲者の知名度やゲームミュージック自体の地位の向上もあって、1996年以降のサウンドトラックやアルバムから「矩形波倶楽部」の名前は消え始め、作曲者(あるいは編曲者)の名前がクレジットされるようになった。加えて1990年代後半以降、バンド結成当時のスタッフもほとんどコナミを退社しており、矩形波倶楽部最後の主要メンバーであった古川もとあきの退社をもって消滅した。コナミの企業形態も1980年代はアーケード版作品も家庭用ゲーム機用作品も同じ「コナミ工業」により開発されていたのが、1990年代半ばから次第に分社化が進み、複数の開発子会社により開発されるようになった。さらに2000年代になってBEMANIシリーズから派生したライブが開催されたり、『beatnationレーベル』が立ち上げられたりしたように音楽ゲームを中心とした展開が主流になるなど大きく変化し、復活は困難な状況になっている。
ただしその後2000年代に入っても楽曲の版権管理などの便宜上から引き続き「コナミ矩形波倶楽部」のクレジットが使用されることもある。一例を挙げると『KEYBOARDMANIA 3rd MIX』には『沙羅曼蛇2』、『イー・アル・カンフー』の曲の細江慎治によるアレンジが収録されているが、原曲の作曲者はそれぞれエンゾニック前田(前田尚紀)、MIKI-CHANG(東野美紀)であることが前者は『沙羅曼蛇2』サウンドトラックライナーノーツ、後者は例えば『幻想水滸伝II』発売時にゲーム雑誌に東野のインタビューが掲載された際などにプロフィールとして記載されていたにもかかわらず、『KEYBOARDMANIA 3rd MIX』のサウンドトラックでは、あくまで2曲とも「作曲:コナミ矩形波倶楽部」となっている。i-revoや携帯電話向けサイト「コナミネットDX」などでコナミの過去のゲームミュージックがダウンロード販売される際にも、既に作曲者が公表されている曲も含めて「コナミ矩形波倶楽部」のクレジットが使用されている。
歴史[]
- 1987年3月 アルファレコード(G.M.Oレーベル)から発売された『コナミックゲームフリークス』で、コナミの音楽スタッフの古川もとあき・森本ゆきえ・船橋淳によって結成(先述のように、古川は1990年結成としている)。
- 1990年2月 リリースした『グラディウスIII』がオリコン26位に入り、ゲーム音楽界初の快挙を成し遂げた。
- 1990年11月 オリジナルアルバム『矩形派倶楽部』リリース(1998年9月にコナミお宝ゲームミュージックコレクションとして再リリース)。T-SQUAREのメンバーが参加(安藤まさひろがプロデュース)
- 1992年6月 『SOUND LOCOMOTIVE』をリリースし、古川がソロでデビューを飾る。
- 1993年 メンバー変更宣言
- 1993年11月 オリジナルアルバム2枚目『HOPE』リリース。
- 1996年11月 セガのS.S.T.BAND元メンバー、並木晃一と古川が手を組み、『POLICENAUTS F/N』リリース。
- 1997年12月 ベストアルバム『矩形波倶楽部&コナミ矩形波倶楽部BEST vol.1』リリース。
- 1998年9月 ベストアルバム『矩形波倶楽部&コナミ矩形波倶楽部BEST vol.2』リリース。
- 2003年1月 古川がコナミを退社した事により、実質消滅。1990年の結成からおよそ13年の歴史に幕。
主要メンバーと担当作品[]
- 古川もとあき(ミッシェル古川、みっしぇるふるかわ、古川元亮)
- 『矩形波倶楽部』(アルバムにてメンバーとして紹介)、グラディウス2、グラディウスII、A-JAX、沙羅曼蛇(MSX)、SUPER魂斗羅、悪魔城伝説、XEXEX、GUITARFREAKS、drummania
- プロフェット深見(プロフェット・FUKA、深見誠一)
- スナッチャー、グラディウスII、バイオミラクル ぼくってウパ、サンダークロス、グラディウスIII、ガイアポリス 〜黄金鷹の剣〜、極上パロディウス
- MIKI-CHANG(東野美紀)
- グラディウス、イー・アル・カンフー、沙羅曼蛇、ライフフォース、グラディウスIII、T.M.N.T.、サプライズアタック、魂斗羅スピリッツ、幻想水滸伝
- その筋森本(森本ゆきえ)
- 『矩形波倶楽部』(アルバムにてメンバーとして紹介)、グラディウスII(ファミコン)、ゴーファーの野望 エピソードII、悪魔城伝説、グラディウスIII(スーパーファミコン)、Pop'nツインビー、ツインビー レインボーベルアドベンチャー
- フナ-chan(船橋淳)
- 『矩形波倶楽部』(アルバムにてメンバーとして紹介)、悪魔城伝説、ツインビー3 ポコポコ大魔王
- ルーズベルト泉(泉陸奥彦)
- スナッチャー、SDスナッチャー、クライムファイターズ、T.M.N.T.、メタモルフィックフォース、スピードキング、ソーラーアサルト、GUITARFREAKS、drummania、KEYBOARDMANIA
- なぞなぞ鈴木(Suzuki Katsuhiko)
- 魍魎戦記摩陀羅、ラグランジュポイント、ツインビー3 ポコポコ大魔王、夢ペンギン物語、KEYBOARDMANIA
- ピストン上原(上原和彦)
- 魔城伝説II ガリウスの迷宮、ゴーファーの野望 エピソード2、F1スピリット、スペースマンボウ
- テクノウチ(竹ノ内裕治:1996年ソニー・コンピュータエンタテインメントに移籍)
- 激突ペナントレース2、スペースマンボウ、ヘクシオン、ミスティックウォーリアーズ、ポリゴネットコマンダーズ、ガイアポリス 〜黄金鷹の剣〜
- むちむちプリン聡子(宮脇聡子)
- XEXEX、ワイワイワールド2、ガイアポリス 〜黄金鷹の剣〜、極上パロディウス、悪魔城すぺしゃる ぼくドラキュラくん、タイニートゥーンアドベンチャーズ
- METAL YUKI(メタルユーキ、斎藤幹雄:テクモより移籍)
- サンダークロスII、ときめきメモリアル、悪魔城ドラキュラX 血の輪廻、グラディウスII(PCエンジン)
- エンゾニック前田(NAOKI MAEDA、ダーマエ、前田尚紀)
- ツインビーヤッホー!、沙羅曼蛇2、DanceDanceRevolution、beatmania IIDX
- プレイバック半沢(半沢紀夫(後にNONに改名):1992年トレジャーに移籍)
- クォース、ドラキュラ伝説
- ゼンジーペキト(関戸剛:1995年スクウェア(現:スクウェア・エニックス)に移籍)
- スペースマンボウ、SDスナッチャー、メタルギア2 ソリッドスネーク、リーサルエンフォーサーズ2 ザ・ウエスタン
- フンイキ福井(福井健一郎:関戸とほぼ同時期にスクウェアに移籍)
- リーサルエンフォーサーズ、G.I.ジョー、バイオレントストーム
- 仲野順丸(仲野順也:関戸とほぼ同時期にスクウェアに移籍)
- マーシャルチャンピオン、ポリゴネットコマンダーズ、ミスティックウォーリアーズ
- yamako(山下絹代)、Charming yamako、ONIGIRI YAMAKO:フリーランス)
- 悪魔城ドラキュラ、もえろツインビー、パロディウス、火の鳥 鳳凰編 我王の冒険、キングコング2 怒りのメガトンパンチ
- KEN(Taurus松原、松原健一)
- 夢大陸アドベンチャー、ドラキュラII、悪魔城ドラキュラ(AC)、にゃんにゃんパニック、グラディウスII、トライゴン、ワイワイワールド2、クライシスフォース、ツインビー レインボーベルアドベンチャー
- J_KANE(兼田潤一郎)
- ラビリンスランナー、にゃんにゃんパニック、サンダークロス、グラディウスIII、pop'n music
ディスコグラフィ[]
矩形波倶楽部[]
- 魍魎戦記 摩陀羅 (1990/4/21 KICA-1008) 矩形波倶楽部名義によるアレンジアルバム
- 矩形波倶楽部 (1990/11/21, 1998/9/23再発) 矩形波倶楽部名義のオリジナルアルバム。ファーストアルバムとも言われている。
- HOPE (1993/11/26) 矩形波倶楽部名義のオリジナルアルバム第二弾。以後は再びゲームアレンジに。
- 矩形波倶楽部 pro-fusion ~ツインビー ヤッホー!~ (1995/7/21)
- 矩形波倶楽部 pro-fusion ~沙羅曼蛇~ (1996/5/22)
- 矩形波倶楽部 pro-fusion ~ときめきメモリアル~ (1998/7/3)
- 矩形波倶楽部 & コナミ矩形波倶楽部 BEST Vol.1 (1997/12/22)
- 矩形波倶楽部 & コナミ矩形波倶楽部 BEST Vol.2 (1998/9/4)
KONAMI矩形波倶楽部/ゲーム・サウンドトラック[]
- オリジナル・サウンド・オブ・グラディウス (1986/3/21 KHY-1010) カセットテープ
- The Konamic Game Freaks (1987/3/25 28XA-135)
- グラディウス III (1990/2/21)
- こなみ すぺしゃる みゅ~じっく 千両箱 平成三年版 (1990/12/21) 3枚組
- 「T.M.N.T.」「グラディウスⅢ」の楽曲を収録
- MADARA ~魍魎戦記 摩陀羅 サウンドトラック~ (1991/3/5 KICA-1024~5) 2枚組
- 出たな!! ツインビー (1991/6/5)
- 魍魎戦記 MADARA SPECIAL (1991/9/5 KICA-7504)
- KONAMI PERFECT SELECTION ~グラディウス~ (1991/11/24)
- コナミ・オールスターズ ~千両箱 平成4年版~ (1991/12/21) 3枚組
- Disc1は1991年10月26日東京・天風会館でのライブを収録
- XEXEX (1992/1/21, 1998/9/23再発)
- 沙羅曼蛇 ~Again~ (1992/3/25, 1998/9/23再発)
- MIDI POWER X68000 Collection Ver.1 (1992/5/21, 1998/9/23再発)
- 「出たなツインビー」「グラディウスⅡ」「パロディウスだ!!」の楽曲を収録
- コナミ・オールスターズ 1993 (1992/12/24)
- KONAMI PERFECT SELECTION ~Sound Racing History~ (1993/2/24)
- POP'n ツインビー グラフィティ (1993/6/23)
- コナミ・アミューズメントサウンズ '93・・・夏 (1993/8/21) 2枚組
- 「ガイアポリス」「リーサルエンフォーサーズ」「ミスティックウォーリアーズ」の楽曲を収録
- 魍魎戦記 MADARA 2 Sound Fantasia (1993/9/3)
- 魍魎戦記 MADARA 2 ORIGINAL SOUNDTRACK (1993/9/22)
- KONAMI GM HITS FACTORY 2 (1993/10/21)
- 悪魔城ドラキュラX (1993/11/3) 2枚組
- 極上パロディウス (1994/7/2)
- ときめきメモリアル SOUNDコレクション (1994/9/21)
- MIDI POWER Ver.5.0 ~スナッチャー~ (1994/10/21)
- ときめきメモリアル オリジナルサウンドトラック (1995/10/25)
- SPEED KING/対戦ぱずるだま オリジナル・ゲーム・サントラ (1996/1/24)
- MIDI Power Pro2 ~ツインビーヤッホー・沙羅曼蛇2~ (1996/7/5)
- ときめきメモリアル2 オリジナルサウンドトラック (1996/12/21)
- ツインビーRPG (1998/4/3)
- パロディウスだ! ~神話からお笑いへ~ (1998/9/23)
- 悪魔城ドラキュラ ベスト (1998/9/23)
- GUNGAGE オリジナル・サウンドトラック (1999/8/6)
- Harlem Beat (1999/11/26)
- ときめきメモリアル2 オリジナル・ゲーム・サントラ vol.1 (1999/12/3) 2枚組
- ときめきメモリアル2 オリジナル・ゲーム・サントラ vol.2 (1999/12/3) 2枚組
- あいたくて… ~your smiles in my heart~ オリジナル・ゲーム・サントラ vol.1 (2000/3/24)
- あいたくて… ~your smiles in my heart~ オリジナル・ゲーム・サントラ vol.2 (2000/3/24)
- Silent Scope TRILOGY オリジナルサウンドトラック (2001/6/27)
- 沙羅曼蛇 アーケード サウンドトラック (2003/4/9)
- GAME SOUND LEGEND SERIES コナミック・ゲーム・フリークス (2005/10/19)
- GAME SOUND LEGEND SERIES コナミ・ゲーム・ミュージック VOL.4 ~A-JAX~ (2005/11/23)
- パチスロ 悪魔城ドラキュラ ORIGINAL SOUNDTRACK (2009/6/24)
特記事項[]
復刻盤の内容変更[]
アルファレコードのG.M.O.レーベルから発売された『コナミックゲームフリークス』『コナミゲームミュージックVol.4』はサイトロンから復刻されているが、この2つのアルバムは一部曲削除やゲームタイトル表記の変更が行われている。前者は『WEC LE.MANS24』が全曲削除、『火の鳥 鳳凰編 我王の冒険』は「コナミ ファミコンアクションゲーム」と名前を変えて収録されている。後者は『F1スピリット』が「MSXレーシングゲーム」と名前を変えてある。これらについては画像も削除されている。理由は商標問題のためであり、このことによって復刻盤が一度発売中止になった経緯がある。
サイトロンとキングレコードの確執[]
ゲーメスト大賞からの企画でゲームミュージック部門10位以内に入ったゲームの音楽を収録したCD(ビデオゲームミュージック年鑑)をサイトロンから発売する事になったが、当時コナミはキングレコードからCDを発売しており、キングレコードが音源の提供を拒否したため、上位に入った『パロディウスだ!』と『サンダークロス』は収録されず、以後数年間に及び発売された「ビデオゲームミュージック年鑑」シリーズにコナミゲームの曲が収録されることは無かった。この事は後々まで尾を引き、GMフェスティバル'92で行われたゲームミュージックバンドのライブを収録したCDもサイトロンから発売されたためにコナミ矩形波倶楽部の曲は収録されず、代わりに『コナミオールスターズ1993』(キングレコード)に収録された。ただし、ライブの模様は全て入っておらず2曲のみで、なおかつ途中でフェードアウトするというものであった。またこれ以外にもゲームミュージックバンドの中ではライブ映像などを収録した映像メディアが希少になっている。
脚注・出典[]
テンプレート:脚注ヘルプ
- ↑ Music Works 古川もとあきStation
- ↑ 『こなみ・すぺしゃる・みゅーじっく 千両箱』のCDジャーナル(音楽出版社)によるレビュー
関連項目[]
- コナミレーベル